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最高裁判所第一小法廷 昭和63年(あ)247号 決定 1989年5月01日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人砂田司、同木﨑博の上告趣意は、憲法三一条違反をいうが、実質は単なる法令違反の主張であり、刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。

所論は、既に犯人が逮捕勾留されている場合には、その身代り犯人として警察に出頭しても犯人隠避罪は成立しない旨主張するので、以下職権により判断する。刑法一〇三条は、捜査、審判及び刑の執行等広義における刑事司法の作用を妨害する者を処罰しようとする趣旨の規定であって(最高裁昭和二四年(れ)第一五六六号同年八月九日第三小法廷判決・刑集三巻九号一四四〇頁参照)、同条にいう「罪ヲ犯シタル者」には、犯人として逮捕勾留されている者も含まれ、かかる者をして現になされている身柄の拘束を免れさせるような性質の行為も同条にいう「隠避」に当たると解すべきである。そうすると、犯人が殺人未遂事件で逮捕勾留された後、被告人が他の者を教唆して右事件の身代り犯人として警察署に出頭させ、自己が犯人である旨の虚偽の陳述をさせた行為を犯人隠避教唆罪に当たるとした原判断は、正当である。

よって、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官佐藤哲郎 裁判官角田禮次郎 裁判官大内恒夫 裁判官四ツ谷巖 裁判官大堀誠一)

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